高齢者の介護をするうえで、移動手段の確保は大きな課題の一つです。
デイサービスへの送迎、通院の付き添い、ちょっとした外出など、移動の機会は意外と多く、適した車があるかどうかで介護の負担が大きく変わります。
私は介護の仕事をする中で、多くのご家族が「親の移動をもっと楽にしたい」と悩んでいる姿を見てきました。
実際に、車の選び方次第で乗り降りのしやすさや安全性、快適さが大きく変わるため、慎重に選ぶことが重要です。
とはいえ、介護向けの車は通常の車よりも高価になることが多く、購入をためらう方も少なくありません。
そんなときに活用できるのが、自治体や国の助成制度です。
介護に適した車を選びながら、こうした制度を上手に活用することで、負担を軽減しながら親の移動をサポートできます。
この記事では、介護の現場での経験をもとに、介護に適した車の選び方やおすすめの車種、助成金制度について詳しく解説します。
親の移動をより安全で快適にするために、ぜひ参考にしてください。
親の介護のための車おすすめは?

介護の仕事をする中で、ご家族から「親の移動をもっと楽にしたいけれど、どんな車を選べばいいの?」という相談をよく受けます。
特に、要介護の状態になると、車の乗り降りや車いすの積み下ろしが負担になりやすく、通常の乗用車では対応が難しいこともあります。
そこで、介護向けの車を選ぶ際のポイントと、おすすめの車種についてご紹介します。
介護向けの車を選ぶポイント
介護に適した車を選ぶ際は、以下のポイントを重視しましょう。
乗り降りのしやすさ
高齢者や要介護者にとって、車への乗り降りがしやすいかどうかは非常に重要です。
スライドドアや電動ステップ、回転シートがついている車は乗降をスムーズにし、介助する側の負担も軽減できます。
車いす対応の有無
車いすを使用する場合は、車いすのまま乗車できるスロープ付きのタイプや、電動リフトで乗り込める車がおすすめです。
スムーズに移動できることで、外出の負担が減ります。
収納スペースの確保
介護には車いすや歩行器、介護用具などの持ち運びが必要になることがあります。
十分な荷室スペースがある車を選ぶと、外出時に困りません。
走行の安定性と安全機能
高齢者は揺れや急ブレーキに弱いため、乗り心地の良い車を選ぶことも重要です。
また、衝突回避支援ブレーキや誤発進抑制機能などの安全装備が充実した車を選ぶと、より安心して移動できます。
おすすめの車種
介護向けの車には、スライドドアタイプ、回転シート付き、車いす対応車など、さまざまな種類があります。
ここでは、介護の現場でもよく使われる車種をご紹介します。
トヨタ シエンタ(ウェルキャブ)
シエンタのウェルキャブ(福祉車両)シリーズは、コンパクトながらスライドドアを採用し、車いす仕様や回転シート仕様など多様なバリエーションがあります。
車いす利用者でも乗り降りがしやすく、日常使いにも適している点が魅力です。
ホンダ フリード+(福祉車両)
ホンダ フリード+は、広い室内空間とスライドドアを備えたコンパクトミニバンです。
車いす仕様車もあり、低床設計なので乗り降りが楽にできます。
特に、車いすをそのまま乗せられるタイプは、介助者の負担が大きく減ります。
日産 セレナ e-POWER(ライフケアビークル)
セレナのライフケアビークルは、車いす仕様や回転シート仕様など、多くの福祉車両タイプが用意されています。
e-POWER搭載モデルは、加速がスムーズで静音性が高いため、乗り心地も快適です。
ダイハツ タント(ウェルカムシート仕様)
軽自動車でありながら、広い開口部とスライドドアを採用しているタントのウェルカムシート仕様は、高齢者の乗り降りをサポートする回転シート付きで、介護をする家族にとっても扱いやすい一台です。
スズキ スペーシア(車いす移動車)
スペーシアの車いす移動車は、軽自動車ながら広い室内空間を確保し、スロープを使って車いすのまま乗車できます。
小回りも利くため、狭い道が多い地域でも扱いやすいのが特徴です。
親の介護のための車購入のための助成はある?

介護の現場では、「親のために福祉車両を購入したいけれど、費用が高くて負担が大きい」と悩まれるご家族が多くいます。
介護向けの車は乗り降りしやすい設計や車いす対応機能が備わっている分、通常の車よりも高額になりがちです。
しかし、自治体や国の助成制度を活用することで、負担を軽減しながら必要な車を購入することが可能です。
ここでは、介護向けの車を購入する際に利用できる助成制度や減免制度について詳しくご紹介します。
1.障害者総合支援法に基づく補助
介護を受ける親が障害者手帳(身体障害者手帳)を持っている場合、「障害者総合支援法」に基づいた補助制度が利用できる可能性があります。
各自治体が実施している補助金制度の中には、車いす対応の福祉車両の購入費用の一部を助成するものがあります。
主な助成内容
- 車いす仕様車の購入費用の一部助成
- 車いすリフトやスロープの設置費用の助成
- 回転シートの取り付け費用の補助
申請方法
お住まいの自治体の福祉課または障害福祉窓口で相談し、申請書類を提出する必要があります。
自治体によって助成額や対象となる車種が異なるため、事前に確認しましょう。
2.自動車税・取得税の減免制度
福祉車両を購入する際には、「自動車税」と「自動車取得税」の減免措置を受けられる場合があります。
これは、高齢者や障害のある方の移動負担を軽減するための制度です。
主な対象
- 車いすのまま乗車できるスロープ付き車両
- リフト付き車両
- 回転シート車両
- 手動運転装置付き車両(身体障害者が自ら運転する場合)
減免される税金
- 自動車取得税(新車・中古車を購入時の税金)
- 自動車税(毎年かかる税金)
- 軽自動車税(軽自動車の場合)
申請方法
車を購入する際に、販売店で減免対象の車両であることを確認し、必要な書類(障害者手帳や福祉車両の証明書など)を自治体の税務課に提出します。
3.介護保険制度を活用した福祉用具購入補助
直接車両の購入費を補助するものではありませんが、介護保険制度を利用して「車いす」や「車いす用スロープ」などの福祉用具を購入する際の補助を受けられることがあります。
車両本体の助成はないものの、車いす対応の車を購入する場合に役立ちます。
対象となる福祉用具
- 車いす(介護保険適用で一部補助)
- 車いす用スロープ(住宅改修の一環として補助される場合あり)
申請方法
介護認定を受けている場合、ケアマネージャーに相談し、必要な書類を市区町村の介護保険課へ提出します。
4.都道府県・市町村独自の助成制度
自治体によっては、福祉車両の購入や改造費用を独自に助成する制度を設けている場合があります。
例えば、一部の自治体では、介護が必要な家族がいる世帯に対して、車いす仕様車の購入費を補助する制度を実施しています。
例としては下記があります。対象となる方がお住まいの都道府県や市町村の制度を確認してみてください。
- 東京都: 一部の区で福祉車両の購入費補助制度あり
- 大阪府: 車いす対応改造費の補助制度あり
- 福岡県: 障害者向け福祉車両の助成金制度あり
申請方法
お住まいの自治体の福祉課、障害福祉窓口、または税務課で詳細を確認し、申請手続きを行います。
5. 車両改造費の補助制度
福祉車両を購入するのではなく、現在所有している車を介護用に改造する場合、一部自治体では改造費用の助成を行っています。
対象となる改造
- 車いす用スロープの設置
- 電動リフトの取り付け
- 回転シートの設置
- 手動運転装置の取り付け
申請方法
自治体の福祉窓口に相談し、改造の見積書や必要書類を提出して申請します。
親の介護のための車おすすめは?購入のための助成はある?まとめ

介護の現場では、高齢者の移動手段の確保が大きな課題の一つです。
送迎や通院、ちょっとした外出など、移動の機会は多く、適した車を選ぶことでご本人もご家族も負担を軽減できます。
車を選ぶ際は、乗り降りのしやすさ、車いす対応の有無、収納スペース、安全機能を重視することが重要です。
特に、スライドドアや回転シート、スロープ付きの車両は、移動時のストレスを大幅に軽減します。
介護の現場でも使われることの多い車種として、
トヨタ シエンタ(ウェルキャブ)
ホンダ フリード+(福祉車両)
日産 セレナ(ライフケアビークル)
ダイハツ タント(ウェルカムシート仕様)
スズキ スペーシア(車いす移動車)
などがあり、ご利用者様の状況に合わせて選ぶことが大切です。
とはいえ、福祉車両は一般の車よりも高額になりがちで、ご家族にとっては大きな負担になることもあります。
そこで、国や自治体の助成制度を活用することが大切です。
障害者総合支援法による補助、自動車税・取得税の減免、介護保険制度を利用した福祉用具購入補助、自治体独自の助成制度、車両改造費の補助など、さまざまな支援が用意されています。
特に、障害者手帳をお持ちの方は助成を受けられる可能性が高いので、お住まいの自治体に相談してみるとよいでしょう。
適切な車選びと助成制度の活用によって、ご本人がより快適に外出できるようになり、ご家族の介護負担も軽減されます。
私たち介護職も、ご家族の負担を少しでも減らせるよう、こうした情報を共有しながらサポートしていきたいと考えています。
最後までご覧いただきありがとうございました。