少子化対策や保育の充実を支える「子ども・子育て拠出金」。
企業にとっては毎月の社会保険料と一緒に納付する負担の一つですが、意外とその仕組みや計算方法を詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか?
「どれくらいの金額を負担しているのか?」
「パート・アルバイトにも適用されるのか?」
「会社の負担を抑える方法はある?」
こうした疑問を解決するために、本記事では子ども・子育て拠出金の計算方法や企業の負担額を抑えるポイントについて分かりやすく解説します!
1. 子ども・子育て拠出金とは?
子ども・子育て拠出金は、企業が負担する社会保険料の一つで、子育て支援や保育の充実のために使われます。
これは、企業が厚生年金の適用事業所である限り、全従業員分の拠出金を負担する義務があります。
目的
この拠出金は、次のような施策に充てられています。
- 保育園や幼稚園の整備
- 待機児童対策
- 子育て支援サービス(病児保育・学童保育など)の充実
2. 計算方法(具体例つき)
企業が負担する子ども・子育て拠出金は、全従業員の標準報酬月額と拠出金率を掛けて求めます。
計算式
標準報酬月額×拠出金率=会社の負担額標準報酬月額 × 拠出金率 = 会社の負担額
拠出金率
拠出金率は年度ごとに変わります。
年度 | 拠出金率 |
---|---|
令和5年度(2023年度) | 0.36% |
令和6年度(2024年度) | 0.36% |
【具体例①:正社員1人の場合】
- 従業員Aの報酬月額:300,000円
- 標準報酬月額:310,000円(社会保険の等級に基づく)
- 拠出金率(0.36%) を適用
計算: 310,000円×0.0036=1,116円310,000円 × 0.0036 = 1,116円
企業はこの従業員Aに対して、毎月1,116円を負担することになります。
【具体例②:従業員5人の会社の場合】
従業員の報酬月額が以下のような場合、それぞれの標準報酬月額を使って計算します。
従業員 | 報酬月額 | 標準報酬月額 | 拠出金計算(0.36%) |
---|---|---|---|
Aさん | 300,000円 | 310,000円 | 1,116円 |
Bさん | 250,000円 | 260,000円 | 936円 |
Cさん | 200,000円 | 210,000円 | 756円 |
Dさん | 180,000円 | 190,000円 | 684円 |
Eさん | 150,000円 | 160,000円 | 576円 |
合計: 1,116+936+756+684+576=4,068円1,116 + 936 + 756 + 684 + 576 = 4,068円
この会社は、毎月4,068円を子ども・子育て拠出金として負担することになります。
3. 会社が負担する対象
(1) 負担の対象となる事業所
- 厚生年金適用事業所であればすべての企業が対象
- 法人企業(株式会社・合同会社など)
- 従業員が一定数以上いる個人事業主(常時5人以上の従業員がいる場合)
(2) 負担の対象となる従業員
- 厚生年金保険の被保険者(加入者)
- 正社員
- 契約社員
- パート・アルバイト(※条件を満たす場合)
- 役員(厚生年金加入者である場合)
※パート・アルバイトでも、週の労働時間が20時間以上であり、月額88,000円以上の報酬がある場合は、厚生年金に加入し、企業が拠出金を負担することになります。
4. 支払い方法
企業は、子ども・子育て拠出金を社会保険料(健康保険・厚生年金保険)と一緒に納付します。
支払いの流れは以下の通りです。
- 毎月の給与計算時に、標準報酬月額をもとに拠出金額を計算
- 健康保険料や厚生年金保険料とまとめて、年金事務所に納付
- 翌月末までに支払う必要がある
📌 注意点:
この拠出金は全額企業負担であり、従業員の給与から天引きすることはできません。
5. 会社の負担額を抑える方法
企業にとってはコスト負担となるため、以下のような方法で調整することが考えられます。
(1) パート・アルバイトの労働時間を調整
- 週20時間未満の勤務にする
- 月額報酬を88,000円未満に抑える → 厚生年金に加入しなければ、拠出金の負担がなくなる
📌 ただし、労働法の観点から無理なシフト変更を行うと、従業員の不利益になる可能性があるので注意が必要。
(2) 給与設計の最適化
- 給与を設定する際に、標準報酬月額の境界線を考慮する
- 社会保険料が大幅に増えないように調整 → 例えば、報酬月額がちょうど 290,000円 なら、社会保険料の等級が上がらないように調整することで、拠出金負担を抑えられる。
(3) 給与以外の報酬制度を活用
- 福利厚生や手当を活用して、基本給を抑えつつ従業員の待遇を向上させる。
- 例:「住宅手当」「交通費補助」「食事補助」などを活用
6. まとめ
✔ 子ども・子育て拠出金は、企業が全額負担する社会保険料の一つ
✔ 従業員の標準報酬月額に拠出金率(0.36%)を掛けて計算
✔ 厚生年金に加入している全従業員が対象(パート・アルバイト含む)
✔ 社会保険料と一緒に、企業が毎月納付する
✔ パート・アルバイトの労働時間調整や給与設計で負担を軽減できる